社会政策 第11巻第3号(通巻第34号)
「一億総活躍社会の現実を問う」を特集に、外国人労働者やタクシー業界の実際を焦点に論じる。外国人材の活用を阻む背景、タクシー業会の規制緩和をめぐる論考から労働市場を広く見渡し、安部政策の影響力を把握する重要性を指摘するとともに、経済政策全体をけん引する中核政策たりうるのかを検討する。つづく小特集では、生活保護における「自立論」を取り上げ、高齢化・複雑化する生活保護世帯に対し、従来の受給廃止・就労支援だけでなく家事や育児の支援を交えた多様な「自立論」を展開する。
[ここがポイント]
◎ 「一億総活躍社会」の安部政策の影響力を問い直す
◎ 高齢化・複雑化する生活保護世帯に対し、家事や育児の支援を交えた多様な「自立論」を展開する。
◎ 妊娠・出産・育児をめぐる女性の就業継続を焦点に、派遣労働者や高年齢化の課題を浮き彫りにする。
【特集】「一億総活躍社会」の現実を問う
〈特集趣旨〉座長報告:「一億総活躍社会」の現実を問う(仁田道夫)
「一億総活躍」と身分制雇用システム(禹宗杬)
「一億総活躍社会」の背後で進む「外国人材の活用」:何が彼/彼女らの「活躍」を阻むのか?(鈴木江理子)
タクシー運転者を取り巻く様々な規制と「規制緩和」(中村優介)
日本の労働組合の変貌と現況(浅見和彦)
【小特集】生活保護における「自立論」
〈小特集趣旨〉小特集に寄せて(大塩まゆみ)
生活保護制度における自立と自助についての政策動向の歴史的変遷(戸田典樹)
生活保護における「三つの自立論」の批判的検討(桜井啓太)
低所得母子世帯の自立支援:生活保護母子世帯と非生活保護母子世帯の子育てと就労に着目して(田中聡子)
【投稿論文】
「家族賃金」観念の形成過程:近江絹糸人権争議後の交渉を対象に(梅崎 修・南雲智映・島西智輝・下久保恵子)
生活困窮者自立支援制度の展開にみる象徴としての社会福祉政策:高齢者の位置付けの変化に着目して(遠藤知子)
家賃負担が子どもの生活に与える影響:広さ・家賃負担・その他の支出のせめぎあいの実証分析(小田川華子)
【書 評】
久本憲夫著『新・正社員論:共稼ぎ正社員モデルの提言』(評者:松尾孝一)
黒田兼一著『戦後日本の人事労務管理:終身雇用・年功制から自己責任とフレキシブル化へ』(評者:橋場俊展)
佐口和郎著『雇用システム論』(評者:禹 宗杬)
尾玉剛士著『医療保険改革の日仏比較:医療費抑制か、財源拡大か』(評者:白瀬由美香)
村田隆史著『生活保護法成立過程の研究』(評者:岩永理恵)
澁谷智子著『ヤングケアラー:介護を担う子ども・若者の現実』 (評者:志賀信夫)
SUMMARY/学会関連資料