いますぐ彼を解きなさい イタリアにおける非拘束社会への試み
なぜ縛るのかと問うことは、精神科病棟や認知症施設の外でも日々行われている、力や器具や言葉によるあらゆる形の拘束について考えることだ。
からだと思考、感覚や感情さえも縛られていると感じるこの国のすべての人に読んでほしい。
松嶋 健(文化人類学者・広島大学准教授)氏推薦
精神病院における身体拘束は、人権にかかわる重要な問題である。イタリアでは、1978年に世界で初めて精神病院の廃絶を定めた「法律180号」が制定された。イタリアで精神病院を解体していった経緯や、現在進行中の拘束廃止をめぐる運動、また、拷問のような「拘束」が頻繁に起こるメカニズムやその社会的背景について、運動の中心メンバーである著者が初めて日本へ向けて書下ろした。「拘束」問題を問う画期的な一冊である。
[ここがポイント]
◎イタリアの精神病院における拘束廃止運動の流れと意義が理解できる
◎精神病院において「拘束」が起こる社会的背景やメカニズムがわかる
はじめに──日本での刊行にあたって
第Ⅰ部 拘束廃止に向けた精神科医の経験から
第1章 総合病院内SPDCで拘束された男性
その死から変化の発端が生まれた
家族の告発により司法裁判へ
裁判の結果と継承
第2章 精神保健局での拘束廃止へのあゆみ──カリアリのケースから
カリアリ県における精神保健サービスの組織
精神保健センター
SPDC(診断と治療のための精神科サービス)
拘束克服に向けた道のり
地域サービスネットワークの変革
24時間体制の精神保健センター開設
SPDCの変革
転換の年
第Ⅱ部 イタリア拘束廃止運動の実際
第3章 ケアの場での器具による拘束
ケアと拘束
拘束の形態
ケアの場での器具による拘束
器具による拘束にあう主体
高齢者を縛る
障害をもつ人を縛る
児童や思春期の子どもを縛る
薬物依存症を抱えた人々を縛る
第4章 精神的困難を抱えた人への人権侵害──イタリアにおける脱施設化の経験と改革後にも残る拘束
精神病者
精神病院時代のイタリア
精神病院をなくしたイタリア
精神科サービスでの器具による拘束の現状
精神保健局内で縛られる場
なぜ縛るのか
縛られる人々
縛る方法
指示と実施
拘束の記録
拘束時間と拡散
個人の自由に対するあらゆる制限
拘束の結果
拘束することは許されるのか
第5章 やればできる
拘束廃止のために必要なことは何か
いくつかの前提条件
まとめ
試みるべきことについて
第Ⅲ部 拘束廃止に向けたインタビュー
第6章 拘束は拷問です
第7章 もはや人間ではない
第8章 遁走する主体
資料編
年表 イタリア精神科医療改革の歴史
年表 フランコ・バザーリア(Franco Basaglia)略歴
参考文献──イタリア精神科医療とその改革を理解するために
訳者あとがき