中東における新たな「地域」の輪郭―― 揺らぐ国家の枠組み、変容する関係性を解く。
日本における中東政治研究の最新の知見をあつめたシリーズの第2巻。
政治学と地域研究を組み合わせ、中東地域の構造的変動を解明することを目指す本シリーズは、
今後の中東地域内力学および国際関係を見通す視座も提供する。
本巻では、2000年代以降、特にその関係性を変容させ、国家/非国家主体を単位とする同盟関係だけでは語りきれない、新たな「地域」としての輪郭を見せつつある四カ国を分析する。
[ここがポイント]
◎ 現代における中東研究の最新の知見
◎ 日本と中東の関係をもりこむ
◎ 政治学と地域研究の融合
◎ 理論研究と事例研究の垣根なく論じる
◎ 全巻の章構成を統一し、比較の視座を提示
巻頭言 「関わりのある他者」中東に関する地域研究と政治学の協調と融合へ
序 章 中東に生成される新たな「地域」──シリア、レバノン、イラク、イラン(末近浩太)
1 新たな「地域」の実像を捉える
2 「地域」とは何か
3 中東における反米陣営の形成と再編
4 新たな「地域」へと変容する反米陣営
5 先行研究と各章の概要
第1章 イラン・日本関係──発展と衰退を繰り返す90年の歴史(千坂知世)
1 政治要因に翻弄されてきたイランと日本の経済関係
2 第1の盛衰──国交樹立~第2次世界大戦期の断交(1929~52年)
3 第2の盛衰──国交回復~イラン・イラク戦争停戦(1953~98年)
4 第3の盛衰──イラン・イラク戦争後~核合意(1989~2015年)
5 政治によって翻弄されてきたイラン・日本関係
第2章 多文化主義──レバノンにおけるメディアの発達と分極化の進展(千葉悠志)
1 「自由なメディア」という幻想
2 政府によるメディア政策
3 メディアと内部アクターとの連動
4 メディアと外部アクターとの連動
5 レバノン・メディアが抱える困難
第3章 国家社会関係──シリア内戦がもたらした希薄化と親和化(青山弘之)
1 弱い国家と社会の関係
2 権力の二層構造の下での「常態化した非常時」
3 内戦がもたらした国家社会関係の変化
4 「実体化した非常時」への移行とそれへの不確実な依存
第4章 政軍関係──IS後イラクの分断と奇妙な安定(山尾 大)
1 ポスト紛争期の政軍関係
2 正規軍再建の蹉跌と準軍事組織の台頭
3 引き裂かれる準軍事組織
4 競合関係がもたらす安定
5 ポスト紛争期の不安定な政軍関係の安定
第5章 選 挙──イラン・イスラーム共和国と「公正な選挙」の必要性(坂梨 祥)
1 先行研究と問題の所在
2 イランの選挙の歴史的背景と制度的特徴
3 イラン・イスラーム共和国における選挙と政治参加
4 「より公正な」選挙にむけて
第6章 安全保障──「全方位提携論」とレバノン(小副川 琢)
1 本章の目的、先行研究の問題点、分析枠組み
2 シリアおよびイランとヒズブッラーとの関係
3 レバノンの歴代首相らの動き──「全方位提携論」からの説明
4 レバノンの首相らによる全方位提携に関する考察
第7章 外 交──シリア内戦に見る米国覇権の黄昏(溝渕正季)
1 後退する米国の存在感
2 シリアをめぐる闘争──ブッシュ政権期の米国・シリア関係
3 戦略なき戦術──オバマ政権期の米国・シリア関係
4 揺れる米国・シリア関係と中東における米国覇権の黄昏
第8章 治 安──イスラーム過激派の越境移動の論理とメカニズム(高岡 豊)
1 イスラーム過激派は国境を越える
2 イスラーム過激派の越境移動に関する先行研究とその問題点
3 イスラーム過激派の越境移動をめぐるいくつかの疑問
4 イスラーム過激派の越境移動の実態と展望
第9章 政治と経済──経済戦略から見るイラク・クルディスタンの独立問題(吉岡明子)
1 クルド人問題の展開
2 武装闘争期のイラク・クルディスタン地域
3 イラク戦争後の主体的な経済政策
4 暗転するクルディスタン経済
5 クルディスタン地域の「国家建設」の課題
あとがき
索 引