道徳科の理論的基盤の構築に取り組み、多彩なアプローチから道徳教育学を捉える。さらに従来の道徳教育のあり方を検証し、今後を探る
著者 |
道徳教育学フロンティア研究会 編
|
ジャンル |
教育
|
出版年月日 |
2022年11月10日
|
ISBN |
9784623094820 |
判型・ページ数 |
A5・320ページ |
定価 |
定価5,720円(本体5,200円+税) |
在庫 |
在庫あり |
2018年度から開始された「特別の教科 道徳」は、定着の色を見せてきた。しかし、このことは必ずしも「道徳教育学」の確立を意味するものではない。そこで本書では、第一巻に続き、より深く道徳科の理論的基盤の構築に取り組み、より多彩なアプローチから道徳教育学を捉える。また、新たな試みとして、次期学習指導要領に向け、これまでの我が国の道徳教育のあり方を検証し、現行の学習指導要領について課題を見出していく。
[ここがポイント]
◎ 道徳教育学の最前線の研究成果を開示する。
◎ 第2巻からの新たな視座として、次期学習指導要領に向け、これまでの我が国の道徳教育のあり方を検証する。
◎ 平成元年度版学習指導要領の改訂に携わった押谷由夫氏へのインタビューも収録。
はじめに
序 章 道徳教育学の構築に向けて(走井洋一)
1 道徳教育研究の多様さと偏り――論文タイトルの分析から
2 他の教科教育研究における学形成に向けての模索とその課題
3 道徳科・道徳教育の特殊性とそれに起因する学形成の困難さ
4 道徳教育学の対象と方法
第Ⅰ部 歴史的視座
第1章 明治中後半期における「道徳」の模索(水野雄司)
1 本章の目的
2 明治20年代――始まりとしての道徳
3 明治30年代――戦争と国民的・国家的道徳
4 明治40年代――到達点としての国民道徳
第2章 昭和戦前期の修身教授改革論の展開――第四期国定修身教科書と「日本精神」をめぐって(貝塚茂樹)
1 道徳教育史における昭和戦前期
2 第四期国定修身教科書と修身科
3 修身教授改革論の展開
4 「日本精神」「日本主義」と修身教育
第3章 修身科の評価の史的展開に関する素描――国民科修身の成績考査の諸相(江島顕一)
1 修身科の評価
2 修身科の評価の変遷
3 国民学校における成績考査
4 修身科の成績考査の研究――今後の課題
第4章 森戸辰男と道徳教育――占領解除後を中心に(緒賀正浩)
1 森戸と道徳教育の関わり
2 森戸の教育再改革論における道徳教育の位置づけ
3 「期待される人間像」答申審議における森戸
4 「第三の教育改革」における森戸の道徳教育論――まとめにかえて
第5章 下程勇吉における「まことの倫理」と道徳教育(桑嶋晋平)
1 近現代日本における「まことの倫理」と道徳教育の諸問題
2 戦後初期から1958年代前後までの下程の道徳教育論の展開
3 道徳教育論における「まこと」
4 下程の「まことの倫理」の今日的意義
第Ⅱ部 理論的視座
第6章 カント主義的構成主義による内容項目の正当化(高宮正貴)
1 道徳的諸価値の正当化の必要性
2 カント倫理学における道徳の区分と内容
3 オニールのカント主義的構成主義による徳の正当化
4 権利基底的正義論の限界
5 オニールによる徳の分類と我が国の内容項目の分類
6 正義と徳の教育に向けて――今後の課題
第7章 共和主義,パトリオティズム,ナショナリズム――「市民」には,なぜ,どのような,「愛国心」が必要なのか(古川雄嗣・南勇佑吾)
1 なぜ「愛国心」と「ナショナリズム」を論じるのか
2 ナショナリズムとは何か
3 ナショナリズムなき愛国心?
4 多文化時代の愛国心教育
5 脱構築から再構築へ
第8章 道徳教育を基礎づける新たな社会像の構想(走井洋一)
1 思考先行型行為モデルの源流とその帰結
2 人間本性としての「自己利益」と「共感」を基盤とした社会
3 人間の自然本性と社会の規模――社会拡大モデルと社会連繫モデル
4 二つの社会モデルから見出される道徳教育の可能性
第9章 友情と道徳的発達――『ニコマコス倫理学』におけるアリストテレスの友愛論を手がかりとして(酒井健太朗)
1 友情と道徳的発達
2 アリストテレス倫理学における友愛
3 対等でない者同士の友愛と道徳的発達
4 対等な者同士の友愛と道徳的発達
5 徳に基づく友愛はどのように生じるのか
6 道徳的発達と友愛
第10章 「考える道徳」に向けた議論における授業論(指導方法論)に関する考察(馬場 勝)
1 考察の観点と方法
2 道徳の教科化前の授業論に係る議論
3 道徳の教科化後の授業論に係る議論
4 授業論に係る論議の連続性
第11章 「資質・能力」の方向性を導くための〈道徳性〉の再定義(荒木寿友)
1 コンピテンシー育成の教育モデル
2 資質・能力に規定される人間性の育成の問題
3 道徳教育は何を目的とするのか
4 資質・能力にどのように道徳性を位置づけるか
第Ⅲ部 実践的視座
第12章 スポーツを題材とした道徳教育の実践開発に向けて(藤井基貴)
1 道徳教育におけるスポーツ/スポーツにおける道徳教育
2 スポーツの起源と価値
3 道徳教育におけるスポーツ
4 スポーツにおける道徳/倫理教育の現状と課題
5 スポーツ・インテグリティ教育と道徳教育の架橋
6 スポーツを題材とした道徳教育の可能性と課題
第13章 郷土を愛する心を育成する道徳教育――学校の特色を生かしたカリキュラム・マネジメントを通して(木下美紀)
1 問題の所在
2 郷土教育をめぐる諸理論と課題
3 「郷土を愛する心」と教育課程
4 学校の特色とカリキュラム・マネジメント
5 具体的な実践事例――「地域・社会貢献」をテーマとしたカリキュラム・マネジメント
6 郷土愛を育成するカリキュラムの可能性と課題
第14章 道徳的諸価値の連関と内容項目の再編(木原一彰)
1 道徳科の授業と内容項目の位置づけ
2 道徳的諸価値の連関とカリキュラム・マネジメント
3 内容項目の整理・統合と,中核的内容項目の設定
4 道徳科における中核的価値の意義と内容項目再編の課題
第Ⅳ部 新しい学習指導要領に向けて
概 説(貝塚茂樹)
第15章 目 標(荒木寿友)
1 徳教育,道徳の時間(道徳科)の目標の変遷
2 道徳教育,道徳科の目標の課題
第16章 内 容 (西野真由美)
1 学習指導要領における内容とその示し方
2 「内容」の実施状況
3 内容構成とその取扱いをめぐる課題
4 展 望
第17章 指 導 法(足立佳菜)
1 本章の立ち位置
2 道徳指導法の変遷の概要
3 各種課題・論点
第18章 評 価(関根明伸)
1 「評価」概念に対する解釈と用法の混乱
2 「道徳教育専門部会」と「道徳教育に係る評価の在り方に関する専門家会議」の「評価」
3 妥当性と信頼性のある「評価」へ
資 料 押谷由夫先生インタビュー――1989(平成元)年版学習指導要領改訂をめぐって(聞き手 西野真由美)
おわりに
事項索引
人名索引