対話としてのテレビ文化 日・韓・中を架橋する
テレビ文化の交流は他者のイメージを変えるだけでなく、自らの社会や文化に対してもこれまでとは違う見方をもたらし、自己と他者との関係について新たな意識を芽生えさせる。その意味で、それはまさに「対話」であるといえるだろう。本書は、日本・韓国・中国のテレビ文化の交流の歴史と現在を、対話をテーマに検討していく。
1 メディア文化をとおした対話
2 つながらない人々、共有されない関心
3 国という枠組みをいかに越えるか
4 対話をさらに深めるために
第Ⅰ部 越境するテレビ文化
第1章 テレビ文化交流の歴史(毛利嘉孝)
1 テレビ文化の交流をとりまくさまざまな位相
2 1970年代という転換期
3 中国における日本テレビ番組の受容の始まり――1980年代
4 中国、香港、台湾における日本ブーム――1990年代以降
5 韓国における日本のテレビ番組の受容――開放政策以前
6 韓国の大衆文化開放政策
7 「韓流」の2000年代
8 番組製作を通じたさまざまな交流――共同制作とリメイク
9 新たなトランスナショナルな交流に向けて
第2章 『花より男子』にみるドラマ制作と海外進出の戦略(ソン・ビョンジュン)
1 韓国版『花より男子』の韓国での反響
2 集英社との版権獲得交渉
3 企画と演出の分離
4 監督と脚本家の選定
5 スターに頼らないキャスティング
6 こだわりのスタイリング、美術、セット製作
7 すべり込みでの放送枠決定
コラム1
ドラマの役割は人々を癒すこと(キム・ヨンヒョン:放送作家)
テレビの見ることで生まれる他地域への興味(福原 愛:卓球選手)
中日韓のテーマはますます多元化する(毛 丹青:神戸国際大学教授)
第Ⅱ部 テレビ番組の相互受容の実態
第3章 テレビオーディエンスの〈現在〉
――東京・ソウル・北京の比較(藤田真文)
1 日韓中で実施したアンケート調査
2 日韓中相互での好意度のギャップ
3 他国の番組視聴が低調な東京――番組視聴の中心はドラマ
4 他国の番組の視聴率が高い北京・ソウル、低い東京
5 北京・ソウルではケーブルテレビで他の国の番組に接触
6 北京・ソウルの若い世代はインターネットで接触
7 テレビ番組は他の国の印象形成に関係
第4章 日常性と非日常性が織りなす共感――北京の特徴(ジン・イン)
1 中国における日本ドラマ、韓国ドラマの受容状況
2 調査の手続き
3 日本ドラマフォーカスグループの調査結果
4 韓国ドラマフォーカスグループの調査結果
5 中国視聴者の心理――若者を中心に
6 今後に向けた活動と提言
第5章 越境対話の可能性と限界――ソウルの特徴(イ・ドンフ)
1 東アジアにおけるドラマ受容の歴史
2 フォーカスグループインタビューによる事例研究
3 東アジアのドラマ視聴とトランスナショナルな経験の地平
――インタビュー調査結果
4 国境を越えた対話の可能性と限界
第6章 「他者」理解の契機としてのドラマ視聴――東京の特徴(伊藤 守)
1 国境を超えるドラマ
2 日本における韓国ドラマ、中国(台湾)ドラマの受容
3 日本の視聴者は韓国ドラマをどう視聴しているのか
4 日本の視聴者は中国・台湾のドラマをどう視聴しているのか
5 韓国、中国(台湾)ドラマの視聴者の〈現在〉
第7章 テレビを通じた文化交流の現在――調査を終えて
(伊藤 守/イ・ドンフ/ジン・イン/藤田真文)
コラム2
ドラマが描く日常世界の影響力(キム・ユンチョル:テレビ・プロデューサー)
政府の資金援助や支持が必要(章 軍:中国人民大学教授)
テレビでアジアの現実を多くの人々に(藤岡朝子:山形国際ドキュメンタリー映画祭ディレクター)
第Ⅲ部 交流から対話へ
第8章 テレビ文化をとおした対話に向けて――パネルディスカッションの記録
(岩渕功一/安部裕子/ウ・ヨンメイ/今野 勉/ソン・ビョンジュン/中園ミホ)
コラム3
ドラマの共同制作には工夫が必要(劉 帆:「新京報」文芸娯楽版編集委員)
テレビによる文化の積極的な学び(ペク・ウナ:『10asia』編集長)
日本の中に自己内対話がどれだけあるか(姜 尚中:東京大学教授)
終 章 テレビドラマがつなぐ東アジア(丹羽美之)
1 『東京ラブストーリー』から『花より男子』へ
2 テレビに国境はあるか?
3 主役としての視聴者・市民
4 ポピュラー文化を通じた東アジアの対話に向けて
あとがき